東京地方裁判所 昭和38年(ワ)265号 判決 1966年10月20日
原告 東京西南信用組合
右訴訟代理人弁護士 石川右三郎
被告 高木操
同 丸野誠
被告本人兼亡日下部米蔵訴訟承継人 丸野怜子
亡日下部米蔵訴訟承継人
被告 日下部ハツ
同 日下部亘
同 日下部充
同 日下部昇
同 日下部勝郎
同 日下部至
同 三浦スミエ
同 日下部守
右被告全員訴訟代理人弁護士 景山収
主文
原告に対し
一、被告高木操および同丸野誠は各自金八万円およびこれに対する昭和三八年三月三〇日より完済まで日歩八銭の割合による金員を
二、金五〇万円およびこれに対する昭和三八年三月三〇日より完済まで日歩八銭の割合による金員につき、被告日下部ハツはその三分の一、被告日下部至、同三浦スミエ、同丸野怜子、同日下部守、同日下部亘、同日下部充、同日下部昇、同日下部勝郎はそれぞれ一二分の一宛を、被告丸野誠は右全額を、各自
三、金三三四万円およびこれに対する昭和三八年三月三〇日より完済まで日歩八銭の割合による金員につき、被告丸野誠、同高木操、同丸野怜子はそれぞれ全額を、被告日下部ハツはその三分の一、被告日下部至、同三浦スミエ、同日下部守、同日下部亘、同日下部充、同日下部昇、同日下部勝郎はそれぞれ一二分の一宛を、各自
それぞれ支払え。
四、訴訟費用は被告らの負担とする。
五、この判決は原告において担保として、被告高木操、同丸野誠、同丸野怜子に対し金百万円宛、被告日下部ハツに対し金四〇万円、被告日下部至、同三浦スミエ、同日下部守、同日下部亘、同日下部充、同日下部昇、同日下部勝郎に対し金一〇万円宛を供するときは、仮に執行することができる。
事実
原告訴訟代理人は主文第一項ないし第四項同旨の判決並びに仮執行の宣言を求め、その請求原因として、原告は(イ)昭和三二年八月六日被告高木操に対し被告丸野誠連帯保証のもとに、(ロ)昭和三三年二月一四日日下部米蔵に対し被告丸野誠連帯保証のもとに、(ハ)同年三月五日被告丸野誠に対し、右日下部米蔵、被告丸野怜子、同高木操連帯保証のもとに、すでに成立せる取引並びに将来成立すべき取引につき(イ)に対しては利息日歩四銭、遅延損害金日歩九銭、(ロ)に対しては利息日歩四銭五厘、遅延損害金日歩八銭(ハ)に対しては利息日歩四銭五厘、遅延損害金日歩八銭の各割合を各自支払う旨の約定をなした。而して、原告は右約定に基づき、被告高木操に対し昭和三二年八月六日金一〇万円を貸与したが、その後右元金内金二万円の弁済を受けたので、同年一二月三〇日あらためて右残金八万円につき弁済期を昭和三三年二月二七日と定めて貸与した。また、原告は日下部米蔵に対し昭和三一年一一月五日より取引を開始したが、昭和三二年八月頃から元利金の遅滞を生ずるに至ったので、昭和三三年二月二〇日にあらためて右日下部に対し金五〇万円を弁済期を同年四月一九日と定めて貸与した。また、原告は被告丸野誠と昭和三〇年一二月一日より取引を開始したが、昭和三三年三月に至り貸付金額が上昇するので、同月五日、あらためて右被告丸野誠に対し金百万円を弁済期を同年五月三日と定めて貸与した。また、原告は被告丸野誠に対し昭和三三年三月一三日金八〇万円を弁済期を同年五月一二日と定めて貸与したが右元金はその後一部弁済され残額は金二五万円となった。また原告は被告丸野誠に対し昭和三三年一一月一五日金七〇万円を弁済期同日と定めて、昭和三五年四月二日金四〇万円を弁済期昭和三六年五月三一日と定めて、昭和三五年九月六日金五〇万円を弁済期同年一〇月五日と定めて、同年一〇月七日金四九万円を弁済期同月二六日と定めて、それぞれ貸与した。而して右各契約はすべて被告丸野誠において、他の被告らを代理してこれを締結したものであり、仮に右丸野誠において他の被告らより代理権の授与がなかったとしても、被告丸野誠、同怜子は夫婦であり、日下部米蔵は右怜子の実父である。被告高木操は、同丸野誠と同業であって、かつ、その先輩であり、右丸野誠は常に右高木操を兄貴と称し、一般には実兄弟と信じられている。そして、右被告らはいずれも原告の組合員であり、被告高木操は同丸野誠との間に原告に対する金銭借受に際しては相互に保証し合う間柄である。また、被告らは昭和三一年頃読売名画興業株式会社(以下読売名画興業という)の、同三三年一一月頃瀬田映画劇場の各設立を計画し、ともにその発起人となり、前者は同年六月四日、後者は翌三四年一月二九日各創立し、いずれもそれぞれの会社重役として就任した(但右日下部のみは長男守が代って就任した)ものである。かような事情のもとに、右被告らは、その実印を右被告丸野誠に持参せしめて、本件各契約を締結せしめ、客観的にその代理権を授与した外観を具えしめたものであるから、原告は被告丸野誠の右各行為につき右被告らの代理権ありと信ずべき正当の理由を有していたものである。よって、被告らはその責を免れない。
なお、右日下部米蔵は昭和三八年六月二二日死亡し同人の本件債務につき、長男被告日下部至、長女同三浦スミエ、二女同丸野怜子、二男同日下部守、三男同日下部亘、四男同日下部充、五男同日下部昇、六男同日下部勝郎、はそれぞれ一二分の一宛の割合で、妻同日下部ハツは同じく三分の一の割合で相続した。
よって、原告は被告らに対し主文第一項ないし第三項掲記の如き(但主文第一項掲記にかかる部分の遅延損害金については約定損害金の範囲内である日歩八銭の割合でこれを求め、なお、遅延損害金はすべて弁済期の後である昭和三八年三月三〇日よりこれを求める)判決を求めるため、本訴に及んだと述べ、
立証として、<省略>被告ら訴訟代理人は、原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。との判決を求め、答弁として、原告の主張事実中、被告らが原告の組合員であること、および被告丸野誠が主たる債務者として原告主張の各金員を借り受けたことは認めるけれども、その余の事実はすべて否認する。被告丸野誠は当時前記読売名画興業の代表者であり、かつ、株式会社瀬田劇場の経営上の実権者であったが、右被告はその経営上の金融の必要のため、専断で本件甲号各証を成立せしめ、本件債務関係に関する手続その他一切をなしたものであって、右被告を除く被告らはこれに関与したことなく、本件発生まで全く知らなかったものである。ただ右読売名画興業の役員登記手続に必要であるから印鑑を貸して貰いたいとの事でこれを承諾したことがあるのみである。と述べ、立証として、<以下省略>。
理由
原告の主張事実中被告丸野誠が主たる債務者として原告主張の各金員を借り受けたことは当事者間に争いがない<省略>によれば、被告丸野誠は前記読売名画興業の設立およびその為の資金を借り入れる等の運営上の必要から、その旨を被告高木操に告げて同人の印顆を借り受けた上、昭和三二年八月六日頃原告との間に甲第一号証を作成することにより右被告高木操を主たる債務者とし、被告丸野誠を連帯保証人として、右当事者間にすでに、成立せる取引並びに将来成立すべき取引等一切の取引につきその債務不履行の場合の遅延損害金は日歩九銭と定めて連帯して支払うべき旨を約したことを認めることができる。<省略>他に右認定を覆えすに足る証拠はない。また、<省略>被告丸野誠は前記読売名画興業の設立およびその為の資金を借り入れる等の運営上の必要から、その旨を日下部米蔵に告げて、同人の印顆を借り受けた上、昭和三三年二月一四日原告との間に甲第二号証を作成することにより右日下部米蔵を主たる債務者とし、被告丸野誠を連帯保証人として、右当事者間にすでに成立せる取引並びに将来成立すべき取引等一切の取引につき、その債務不履行の場合の遅延損害金は日歩八銭と定めて連帯して支払うべき旨を約したことを認めることができる。<省略>他に右認定を覆えすに足る証拠はない。また、<省略>によれば、被告丸野誠は前記読売名画興業の設立およびその為の資金を借り入れる等の運営上の必要から、その旨を被告高木操、日下部米蔵に告げて同人らの印顆を借り受け、更に右丸野誠の妻である被告丸野怜子の印顆を使用して、昭和三三年三月五日頃、原告との間に甲第三号証を作成することにより右被告丸野誠を主たる債務者とし、被告丸野怜子、同高木操および日下部米蔵を連帯保証人として、右当事者間にすでに成立せる取引並びに将来成立すべき取引等一切の取引につき、その債務不履行の場合の遅延損害金は日歩八銭と定めて連帯して支払うべき旨を約し、右被告丸野怜子は夫である右被告丸野誠が右怜子の印顆を持出していたこと、および右誠が右読売名画興業のため銀行から金員を借り出していたことを知っていたことを認めることができる。<省略>他に右認定を覆えすに足る証拠はない。然らば、被告丸野誠を除く他の被告らは右甲第一号証ないし甲第三号証を前記の如く作成するについて、その代理権を右被告丸野誠に授与し、同人をしてこれを作成せしめたものと認めるのを相当とする。<省略>によれば、原告は被告高木操に対し金一〇万円を貸与していたが、その後内金二万円を返済されたので、昭和三二年一二月三〇日にあらためて右残金八万円につき弁済期を昭和三三年二月二七日として貸付けることとし、右支払の為約束手形一通(甲第四号証)を右高木より受取ったことを認めることができる。<省略>他に右認定を覆えすに足る証拠はない。丸野誠作成部分については、<省略>によれば、被告丸野誠は前記読売名画興業の設立およびその為の資金を借り入れる等の運営上の必要から、その旨を日下部米蔵に告げて、同人の印顆を何回も借りたことがあり、更に昭和三三年二月一九日頃右読売名画興業設立に必要だからと言って同人の印顆を借り受け、原告との間に前同日右日下部米蔵を債務者として金五〇万円を弁済期同年四月一九日と定めて借り受け、その支払いの為に原告に対し右被告丸野誠、日下部米蔵連名の約束手形一通(甲第五号証)を振出交付したことを認めることができる。<省略>他に右認定を覆えすに足る証拠はない。然らば、被告丸野誠は右日下部米蔵の代理権授与のもとに同人の代理人として原告との間に右消費貸借契約を締結したものと認めるのを相当とする。
而して、被告日下部ハツの本人尋問の結果によれば、右日下部米蔵は昭和三八年六月二二日死亡したことが認められ、他に右認定を覆えす証拠はない。そして、被告日下部至外八名の被告においてそれぞれ原告主張の如く右日下部米蔵を相続したことは弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。
然らば、被告高木操、同丸野誠は連帯して原告に対し被告高木操に対する右貸金八万円およびこれに対する弁済期の後である昭和三八年三月三〇日より完済に至るまで約定遅延損害金の範囲内である日歩八銭の割合による遅延損害金の、また、日下部米蔵に対する右貸金五〇万円およびこれに対する弁済期の後である昭和三八年三月三〇日より完済に至るまで日歩八銭の割合による約定遅延損害金につき、原告に対し、被告日下部ハツはその三分の一、被告日下部至、同三浦スミエ、同丸野怜子、同日下部守、同日下部亘、同日下部充、同日下部昇、同日下部勝郎はそれぞれ一二分の一宛を、被告丸野誠は右全額を連帯して、また、被告丸野誠に対する貸金合計金三三四万円およびこれに対する各弁済期の後である昭和三八年三月三〇日より各完済に至るまで日歩八銭の割合による約定遅延損害金につき、原告に対し、被告丸野誠、同丸野怜子、同高木操はそれぞれ全額を連帯して、被告日下部ハツはその三分の一、同日下部至、同三浦スミエ、同日下部守、同日下部亘、同日下部充、同日下部昇、同日下部勝郎はそれぞれ一二分の一宛を連帯して、それぞれ支払う義務あるものというべく、これが支払いを求める原告の本訴請求は理由があるので全部認容し<以下省略>。